電気めっきについて・電気めっきの歴史や原理、作業工程を解説

電気めっきは、電解液の中に金属を溶けこませて、そこに直流電流を通電することにより対象物にめっきを施す湿式めっき法です。この記事では、電気めっきの原理や作業工程のほか、歴史についても解説しています。

電気めっきについて

メッキ加工

電気めっきは、電流を使って対象物にめっきを施す方法で、金属を溶かしこんだ水溶液の中にめっき対象物を浸し、直流電流を通電することで対象物にめっきを施す湿式めっき法の一つです。電気めっきは、めっきの対象となる物体が持つ特性とは別の特性を付与することが可能で、それ以外にはサイズ合わせなどの目的で使われることがあります。

電気めっきの歴史

現在のような電気めっきが発明されたのは19世紀初頭のこと。イタリアの発明家が行ったものが最初だと言われています。その後、19世紀も半ばになると、電解液を使った電気めっきの方法はヨーロッパを中心に広がりを見せ、主に装飾用のめっきとして使われました。この頃には工業での利用を想定した電気めっきプロセスの開発も始まっており1876年、ドイツのハンブルクで世界初のめっき工場が操業を開始しました。すでにニッケルや亜鉛、スズなどの電気メッキ装置が開発されていて、産業用の大型電解槽なども作られるようになります。
19世紀も終わりに近づくと、発電機が開発されたことで、より大きな電流が使えるようになり、めっきの工業利用が飛躍的に伸びます。発電機は、大型機械や車のパーツなどに、腐食や摩耗に対抗する強さを与えたのです。
戦争、そして航空産業の発展は、電気めっきの技術発展に寄与しました。クロムメッキが一般的に使われるようになったのも戦後のこと。そしてめっきは手作業からオートメーションの時代へと進化していきます。

電気めっきの原理について

電気めっきでは、まず、めっきする金属のイオンが含まれているめっき液に、めっきの対象となる材料を入れてマイナス極に設置し、プラス極にはめっきする金属を設置して、直流電流を流します。電流が流れることで、マイナス極で反応(還元反応)が発生し、めっきする金属が、めっきの対象となる材料の表面に析出、これが皮膜化したものがめっきになるというわけです。
還元反応は、めっきする金属の表面で、めっき液に含まれているイオンが、電荷を失うことにより金属になることを表します。
めっきは装飾目的や、摩耗などから守る目的で施す皮膜のことですが、めっきを施す作業プロセスのすべてをさして「めっき」と呼ぶこともあります。もともと日本で言う「めっき」は、古くから使われていた「滅金(めっきん)」という言葉が語源とされています。滅金は、古墳時代には日本に伝わっていたと言われるめっきの方法で、水銀と金を混合した物質「アマルガム」を熱することにより表面加工を行います。奈良の大仏様がこの方法で金色にめっきされています。

電気めっきの作業工程

電気めっきの基本的な作業工程についてご紹介します。 まず、めっきの対象となる素材をアノードに使用します。アノードは、外部の電源と接続された電極のことで、これらのすべてを電解液の中に浸します。
外部の電源からアノードに電流を流します。アノードのマイナス極にはめっきの対象となる素材をセット、プラス極にはめっきする金属をセットします。
電流を流すことで、電解液に溶けこんでいる金属イオンが、めっきの対象となる素材の表面にめっきされます。
電解槽の中には、アノードが溶け出すことを助けるため、また伝導率をアップさせるために、多くの場合、金属化合物以外の物質を加えます。

部分めっき

物体にめっきを施す際、一部だけはめっきせずに残したい、ということはよくあります。このような場合、表面に電解液が触れないように、めっきを防ぐ物質を使います。テープや蝋、感光性樹脂などがめっきされることを防ぐ目的で使われます。

電流密度

電流密度は、めっきが進むスピードと、めっきのクオリティに影響する要素です。この電流密度は高ければ良いというわけではなく、「適度」が求められます。高い電流密度では、めっきの密着が速くなるのですが、これが度を過ぎると定着性が悪くなります。これはクオリティの低下にもつながります。電気めっきを施す場合、現実的に凹凸のある物体をめっきすることが多くなりますが、なるべく電流密度にムラができないよう努力することが求められます。めっきする物体に合わせてアノードを変える、などが具体策になります。

ストライク

ストライクのプロセスの目的は二つあります。一つはめっきの基盤としてのめっき。めっきの品質を高くする場合、電流密度が高く、イオン濃度の低い電解槽を使って、ある程度の厚さの基盤となるめっきを施した後、通常のめっき作業を行います。
金属の種類が異なるめっきをする際も、このストライクを使用します。これは金属同士の相性も関係しますが、たとえば相性があまり良くない金属同士の組み合わせの場合、ストライクを施すことで、密着を助けることが可能になります。

PRめっき

PRめっきは、「めっきする物体の位置により電流密度が違う」という問題を克服するためのメソッド。電流を常に一定方向に流すのではなく、時に逆方向に流すことで、めっきをなるべく均等に密着させるために行います。

パルスめっき

通常の電気めっきでは、フラットな直流電流を使ってめっきの作業を行いますが、電流の停止を繰り返しながらめっきする方法もあります。これがパルスめっきで、高い密度の電流で、めっきのクオリティをハイレベルに保つために行います。

筆めっき

筆めっきのプロセスは、やはりめっきの形成を均等にするためのメソッドです。筆めっきでは、作業者が筆を動かすアナログ的な技術です。筆めっきは、電気めっきの装置自体を小型化することができるというメリットがあるほか、電解液の量も少なくて済みます、ただ、筆の扱い自体が作業をする者の技量に頼らなければならない点はデメリットと言えるでしょう。

洗浄

洗浄は、電気めっきの仕上りを左右する重要なプロセスです。めっきの対象物表面になんらかの汚れが存在すると、めっきの密着性が著しく低下します。そのため、めっきの工程に入る前に、洗浄しておくことが大切です。洗浄には、電解洗浄、アルカリ洗浄、溶剤洗浄など、さまざまな方法があります。洗浄が完璧な状態になると、めっき対象物の表面は水を弾くことがなくなります。

バレルめっき

バレルめっきは、樽状のめっき設備にめっき対象物をセットして、その樽を回しながら通電させるめっきの方法です。省エネで効率の良いめっき手法ではありますが、どんなめっきにも使えるメソッドではありません。

引っ掛けめっき

電解液の中にめっき対象物を引っ掛けるように吊してめっきする方法です。

連続めっき

線状のめっき対象物や、フープ(帯)のように長く、連続した対象物には、専用設備を使って、すべての処理を一つの流れの中で行うことが可能です。これを連続めっきと呼びます。

電気めっきについて・まとめ

電気めっきは、とても一般的なめっきの方法ですが、メリットばかりのめっきメソッドではありません。そのため、ワークに合わせて作業を行うことが必要不可欠です。電気めっきは、確認されているわけではありませんが、一説によると、紀元前のものとされる「バグダッド電池」が起源だとも言われています。このバグダッド電池は、銅の筒の内部に鉄でできたシリンダーが入っていて、液体の痕跡もあることから、めっきに使われていたのではないかとも言われているのです。電気めっきには我々の思いもよらないロマンが隠されているのかもしれません。